中小企業や小規模事業者の事業承継は、日本経済の持続的発展において重要な課題です。
経営者の高齢化や後継者不足により、多くの企業が存続の危機に直面しています。
この問題に対応するため、経済産業省は「事業承継・引継ぎ補助金」制度を設けました。
この補助金は、円滑な事業承継や事業引継ぎを促進し、中小企業の事業継続と雇用維持の支援が目的です。
後継者不在企業のM&A支援、経営者交代による新たな取り組みの促進、さらには廃業にともなう再チャレンジまで幅広いケースをカバーします。
2024年度も続くこの制度は、中小企業の事業承継問題に対する政府の積極策を示し、日本の産業基盤維持・強化に大きく貢献するでしょう。
本記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要から、補助金の種類・申請方法・採択率の現状・申請のポイントまで詳しく解説していきます。
事業承継やM&Aを検討している経営者の方、後継者問題に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業や小規模事業者の事業再編・事業統合を支援する国の制度です。
この補助金は、後継者不在企業の事業引継ぎや経営者交代にともなう新たな取り組み、さらにはM&Aによる事業再編を財政的に支援します。
対象となるのは、事業承継やM&Aを検討している中小企業・小規模事業者・個人事業主です。
補助金は、事業承継に付随する新事業展開や販路開拓・設備投資などの費用を幅広く補います。
また、専門家の活用や廃業にともなう再チャレンジまでサポートする点が特徴的です。
中小企業の円滑な事業承継と、それに付随する経営革新や事業拡大が促進されることが期待されています。
事業承継・引継ぎ補助金が誕生した背景には、中小企業経営者の高齢化と後継者不足という深刻な課題があります。
日本の中小企業経営者の多くは60代~70代です。
引退を考える経営者は増加していますが、後継者が見つからないケースが多くみられます。
このような状況では、黒字経営の企業であっても後継者不在により廃業を余儀なくされてしまうのです。
事業承継・引継ぎ補助金は、こうした課題を解消し、企業の持続的な成長と日本経済の安定を図るために設けられました。
この補助金は、事業承継やM&Aで経営資源の引継ぎを支援し、地域経済の活性化に貢献しています。
【参考】中小企業庁 事業承継を知る
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業の円滑な事業承継とM&Aを促進するために設けられた制度で、主に3つの枠に分かれます。
それぞれの枠には特徴的な支援内容と補助額が設定されており、企業の状況に応じて適切な支援を受けることが可能です。
経営革新枠は、事業承継やM&A後の中小企業者が、経営改革の費用の一部を補助する制度です。
この枠には以下3つの類型があります。
専門家活用枠は、M&A時に必要な専門家の費用支援を目的としています。この枠には以下2つの類型があります。
廃業・再チャレンジ枠は、廃業や再チャレンジにともなう費用支援を目的としています。
これらの補助金は、中小企業の事業承継や再編を支援して経済の活性化を図るために設けられています。
各枠の特徴を理解し、自社の状況に最適な支援を選択することが重要です。
補助金の種類と補助額について理解したところで、次は実際の申請手続きと必要書類について詳しく見ていきましょう。
申請プロセスを正確に把握し、必要な準備を整えることでスムーズな申請が可能となります。
【参考】事業承継・引継ぎ補助金 9次公募のご案内(9次公募全体版)
【参考】事業承継・引継ぎ補助金 交付規程
事業承継・引継ぎ補助金の申請手続きは、以下の流れで進められます。
各段階で必要な書類や手続きを適切に準備し、期限に余裕を持って申請を進めることが重要です。
不明点がある場合は、早めに事務局や認定支援機関に相談することをおすすめします。
【参考】事業承継・引継ぎ補助金 交付規程
【参考】経済産業省 ミラサポplus 中小企業庁担当者に聞く「事業承継・引継ぎ補助金」
事業承継・引継ぎ補助金について、事前準備~事業終了までの流れは以下のとおりです。
ステップ | 内容 |
1. 事前準備 | • gBizIDプライム取得 • 公募要領確認 • 補助事業計画作成 |
2. 交付申請 | • jGrantsを通じてオンライン申請 |
3. 審査と交付決定 | • 事務局による審査 • 交付決定通知受領 |
4. 補助事業実施 | • 事業遂行 • 進捗状況報告 • 経費管理 |
5. 実績報告 | • 事業完了後に成果と経費詳細を報告 |
6. 補助金交付 | • 確定検査 • 交付請求 • 補助金受領 |
7.事業化状況報告 | • 補助事業完了後5年間、毎年度の事業化状況を報告 |
各段階で期限と条件を厳守し、適切に手続きを進めることが重要です。
特に注意すべきは、補助金交付後も事業は継続することです。
補助事業完了後5年間は毎年度、事業化状況報告が必要となります。
この報告では、補助事業の成果の事業化や知的財産権の取得状況・売上高・従業員数などの状況を報告します。
スケジュール管理と必要書類の準備に注意を払いながら、長期的な視点で計画的に事業を進めましょう。
事業承継・引継ぎの効果を最大限に引き出すためには、補助金交付後も継続的な取り組みが重要です。
事業承継・引継ぎ補助金の7次~9次公募採択率は以下のとおりです。
【7次公募】
種類枠 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
経営革新枠 | 313件 | 190件 | 約60.7% |
専門家活用枠 | 498件 | 299件 | 約60.0% |
廃業・再チャレンジ枠 | 28件(単独2件・併用26件) | 10件 | 約35.7% |
【8次公募】
種類枠 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
経営革新枠 | 334件 | 201件 | 約60.2% |
専門家活用枠 | 374件 | 229件 | 約61.2% |
廃業・再チャレンジ枠 | 22件(単独1件・併用21件) | 12件 | 約54.5% |
【9次公募】
種類枠 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
経営革新枠 | 388件 | 233件 | 約60.1% |
専門家活用枠 | 440件 | 275件 | 約62.5% |
廃業・再チャレンジ枠 | 25件(併用25件) | 14件 | 約56.0% |
全体的に経営革新枠と専門家活用枠の採択率は60%前後で推移しています。採択率を上げるためのコツについては、次の記事をご覧ください。【関連記事】事業承継・引継ぎ補助金の採択率は?採択されやすくなる方法も徹底解説!
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業の円滑な事業承継とM&Aを促進し、経営の革新や生産性向上を支援する重要な制度です。
次にある3つの枠を通じて、幅広いニーズに対応しています。
申請プロセスは、事前準備から補助金交付まで6つのステップで構成され、jGrantsを通じたオンライン申請が求められます。
近年の採択率は約60%前後で推移しており、綿密な事業計画の策定が採択の鍵です。
この補助金を活用することで、事業承継やM&Aにともなう費用負担を軽減しつつ、新たな事業展開や経営改善を図ることができます。
自社の状況を適切に分析し、最適な枠を選択して申請することが重要です。
詳細は公式サイトで確認し、専門家のアドバイスも積極的に活用しましょう。