事業再構築補助金は、コロナ禍で打撃を受けた企業が新たな事業モデルを構築・成長を目指すための支援制度です。
経済産業省が主導し(2021年1月に創設)、企業の事業再構築や新分野への進出を通じて経済の回復と地域経済の活性化を図ることが目的です。
この補助金は設備投資や新たな事業計画の実施に必要な資金を提供し、企業が競争力を高めるための一助となります。
成長分野への進出やコロナ後の経済復興を支える取り組みが重点的に支援されているのです。
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者がポストコロナ時代に対応した事業再構築を支援するための制度です。
新市場進出・事業・業種転換・事業再編・国内回帰・地域サプライチェーンの維持・強靭化など、思い切った事業再構築に挑戦する中小企業を支援します。
対象となる事業は事業再構築指針に示された定義に該当し、事業計画について金融機関や認定支援機関の確認を受ける必要があります。
また、補助金申請にはGビズIDの取得が必須です。
補助対象経費には、建物費・機械装置費・技術導入費・外注費・広告宣伝費などが含まれます。(従業員の人件費や不動産購入費は含まれません)
【参考】経済産業省 「事業の再構築に挑戦する皆様へ」第12回公募
事業再構築補助金では、事業計画の内容に合わせていくつかの事業類型が存在します。それぞれの事業類型によって、補助金額や補助率が異なります。
下記の表は、事業再構築補助金の申請類型・従業員数・および補助金額をまとめたものです。
申請類型 | 従業員数 | 補助金額 |
成長分野進出枠(通常類型) | 30人 | 最大3,000万円(一部廃業を伴う場合は最大5,000万円、短期に大規模な賃上げする場合は最大4,000万円) |
成長分野進出枠(GX進出類型) | 中小企業 | 最大5,000万円(短期に大規模な賃上げする場合は最大6,000万円) |
成長分野進出枠(GX進出類型) | 中堅企業 | 最大1億円(短期に大規模な賃上げする場合は最大1.5億円) |
コロナ回復加速化枠(通常類型) | 30人 | 最大2,000万円 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) | 30人 | 最大1,500万円 |
サプライチェーン強靱化枠 | 30人 | 最大3億円(建物費を含む場合は最大5億円) |
※ 従業員数が30人の場合の補助金額を記載。
補助金額は申請類型や従業員数によって異なります。
特定の条件を満たす場合には、さらに高い補助金額が適用されます。
【参考】経済産業省 「事業の再構築に挑戦する皆様へ」第12回公募
下記の表は、事業再構築補助金の申請類型・対象となる事業者規模・補助率および特定条件下での補助率をまとめたものです。
申請類型 | 対象(事業者規模) | 補助率 | 特定条件の補助率 |
成長分野進出枠(通常類型) | 中小企業 | 1/2 | 2/3(短期に大規模な賃上げをおこなう場合) |
成長分野進出枠(通常類型) | 中堅企業 | 1/3 | 1/2(短期に大規模な賃上げをおこなう場合) |
成長分野進出枠(GX進出類型) | 中小企業 | 1/2 | 2/3(短期に大規模な賃上げをおこなう場合) |
成長分野進出枠(GX進出類型) | 中堅企業 | 1/3 | 1/2(短期に大規模な賃上げをおこなう場合) |
コロナ回復加速化枠(通常類型) | 中小企業 | 2/3 | – |
コロナ回復加速化枠(通常類型) | 中堅企業 | 1/2 | – |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) | 中小企業 | 3/4 | 2/3(コロナで抱えた債務の借り換えを行っていない場合) |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) | 中堅企業 | 2/3 | 1/2(コロナで抱えた債務の借り換えをおこなっていない場合) |
サプライチェーン強靱化枠 | 中小企業 | 1/2 | – |
サプライチェーン強靱化枠 | 中堅企業 | 1/3 | – |
※ 上記以外にも、規模拡大や賃上げに取り組む事業者への上乗せ措置があります。
【参考】経済産業省 「事業の再構築に挑戦する皆様へ」第12回公募
事業再構築補助金では、申請類型と条件に応じて補助金額と補助率が設定され企業の規模や戦略に応じた支援が提供されます。
企業は自社の状況に合わせて最適な申請類型を選択し、事業再構築に取り組むことができます。
事業再構築補助金を申請するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。
これらの要件は、共通の要件と各種枠ごとの要件に分かれているのが特徴です。
一つずつ解説していきます。
事業再構築補助金の申請には、いくつかの共通要件があります。
まず、事業が「事業再構築指針」に定義された「事業再構築」に該当するのかを確認してください。
次に、事業計画について金融機関や認定経営革新等支援機関のチェックを受けます。
補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年平均成長率または従業員一人あたりの付加価値額が3~5%以上増加することが条件です。
【参考】事業再構築補助金 第12回公募の概要 1.1版 令和6年5月 経済産業省 中小企業庁
成長分野進出枠(通常類型)は、ポストコロナに対応した事業再構築をこれからおこなう事業者が対象です。
成長分野に向けた大胆な事業再構築や国内市場の縮小・産業構造の変化などにより、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を支援します。
市場拡大要件を満たして申請する場合は共通要件に加え、以下の要件をいずれも満たす必要があります。
市場縮小要件を満たして申請する場合は共通要件に加え、以下の要件のいずれかを満たす必要があります。
【参考】事業再構築補助金 第12回公募の概要 1.1版 令和6年5月 経済産業省 中小企業庁
成長分野進出枠(通常類型)は、ポストコロナ時代に対応するための事業再構築を支援する重要な補助金です。
市場拡大要件や市場縮小要件を満たす事業者は、この補助金を活用することで新たな事業展開や業種・業態の転換に取り組むことができるでしょう。
成長分野進出枠(GX進出類型)は、環境問題への対応やグリーン経済への移行を促進するため、グリーン分野で事業再構築に取り組む事業者の支援が目的です。
共通要件に加え、以下2つの要件を満たす必要があります。
安定的な雇用と賃金水準を維持できる計画が必要です。
【参考】事業再構築補助金 第12回公募の概要 1.1版 令和6年5月 経済産業省 中小企業庁
これらの要件を満たすことで、GX進出類型による支援を受けられる可能性が高まるでしょう。
コロナ回復加速化枠(通常類型)は、コロナ禍の影響が現在も続く事業者を支援する枠組みです。
特にコロナ禍で発生した債務の借り換えや、事業再生に取り組んでいる事業者を対象としています。
共通要件に加え、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
【参考】事業再構築補助金 第12回公募の概要 1.1版 令和6年5月 経済産業省 中小企業庁
これらの要件を満たすことで、コロナ回復加速化枠(通常類型)による支援を受けることができます。
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)は、高まる最低賃金の影響で事業継続が困難な事業者を支援する制度です。
共通要件に加え、以下2つの要件を満たす必要があります。
【参考】事業再構築補助金 第12回公募の概要 1.1版 令和6年5月 経済産業省 中小企業庁
これらの要件を満たすことで、コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)による支援を受けられる可能性が高まるでしょう。
サプライチェーン強靱化枠は、国内サプライチェーンの強靱化の観点からポストコロナの事業再構築をおこなう事業者を支援します。
共通要件に加え、以下の要件をいずれも満たす必要があります。
【参考】事業再構築補助金 第12回公募の概要 1.1版 令和6年5月 経済産業省 中小企業庁
上記の条件を満たすことで、サプライチェーン強靱化枠による支援を受けられる可能性が高まります。
事業再構築補助金を申請する際には、いくつかの重要な手順とスケジュールを理解しておくことが重要です。
具体的な手順とスケジュールについて詳しく説明します。
事業再構築補助金の申請手続きには、認定支援機関のサポートを受けることが推奨されます。
まず、申請者は認定支援機関と協力して必要な事業計画書を作成してください。
この計画書には、事業再構築の目的や具体的な施策や期待される成果などを詳細に記載します。
次に、必要書類を準備しましょう。
事業計画書に加え、申請者の経営状況を示す財務諸表や事業再構築の具体的な内容を示す資料が含まれます。
これらの書類をGビズIDを使用して、電子申請システムにアップロードしてください。
認定支援機関のサポートを受けることで、書類の正確性や申請の成功率アップにつながります。
事業再構築補助金の申請には、いくつかの重要な日程があることを把握しましょう。
申請受付期間は通常、公募開始から数ヵ月間に設定されています。
具体的な申請受付期間は、令和6年4月23日から令和6年7月26日まで。
審査期間は通常、申請受付終了後から約2~3ヵ月間です。
審査が終了すると、採択結果が発表されます。
令和6年の採択結果発表は10月下旬から11月上旬を予定してください。
これらの日程を把握し、スケジュールにしたがって計画的に申請手続きを進めることが重要です。
詳しいスケジュールについては、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】事業再構築補助金 第10回以降はどう変わった?最新第12回公募スケジュールも含めて徹底解説!
以上が申請方法の概要です。
次に、審査のポイントについて詳しく見ていきましょう。
事業再構築補助金の審査は、事業計画に基づいておこなわれます。
採択されるためには、合理的で説得力のある事業計画を策定することが重要です。
下記に、審査項目とそのポイントについて表でまとめましたのでご覧ください。
審査項目 | ポイント |
補助対象事業としての適格性 | ・事業再構築指針に沿った取組でいること・補助対象事業の要件を満たしていること |
新規事業の有望度 | ・継続的に売上・利益を確保できる規模を有しているか・自社にとって参入可能な事業か・競合他社と比較して差別化が可能か |
事業の実現可能性 | ・事業化に向けた課題の検証・解決方法・スケジュールが明確かつ妥当か・最近の財務状況などから補助事業を適切に遂行できるか・充分な体制を確保できているか |
公的補助の必要性 | ・川上や川下への経済波及効果が大きい事業か・社会的インフラを担う事業か・新たな雇用を生み出す事業か・補助事業として費用対効果が高いか・地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献しうる事業か |
過剰投資の抑制 | 同時期に類似のテーマ・設備などに関する申請が集中している場合、一時的流行による過剰投資誘発の可能性を考慮し、別途審査を実施。過剰投資と判断された場合は大幅に減点。 |
【参考】事業再構築補助金 第12回公募の概要 1.1版 令和6年5月 経済産業省 中小企業庁
これらの項目に加えて、口頭審査がおこなわれる場合もあります。
口頭審査では、事業計画の内容や事業実現に向けた意欲、事業者の経営能力などが評価されます。
事業再構築補助金は、単に資金を得るための制度ではありません。
審査では、事業の成長性や社会への貢献度、事業者の経営能力などが総合的に評価されます。
事業再構築補助金は、変化の激しい時代において中小企業が成長を遂げるための大きな支えとなります。
補助金を活用することで、新規事業への進出・既存事業の転換・設備投資など未来への投資が可能になるでしょう。
申請には、事業計画の内容が特に重要視されます。
ただ資金調達を目指すのではなく、事業を通しての成長と社会貢献していくのか明確なビジョンと計画を盛り込みましょう。
認定支援機関などの専門家のサポートを受け、補助金制度を最大限に活用しながら力強い事業成長を実現してください。