IT導入補助金は中小企業のデジタル化を支援する大変魅力的な制度ですが、実は申請の50%以上が不採択となっています。
この高い不採択率は、申請の難易度の高さを物語っています。
本記事では、IT導入補助金が不採択となる主な理由を徹底的に解説します。
理由を把握し的確に対策することで、申請の成功率を高めることができるでしょう。
IT導入補助金の活用を検討している方は、ぜひ本記事を最後までご覧いただいて、万全の準備で臨んでください。
IT導入補助金が不採択となる主な理由は、申請要件を満たしていない・必要書類の不備・対象外の事業者に該当していることなどが挙げられます。
これらの理由を把握し、注意深く申請をすることが重要です。
IT導入補助金の申請は、各枠ごとに定められた要件を満たす必要があります。
要件を満たしていない場合、申請は不採択となります。
以下は、申請要件を満たしていない例です。
項目 | 内容 | 申請枠 | 補足 |
最低賃金 | 交付申請の直近月に事業場内の最低賃金が法令上の地域別最低賃金以下だった | 全ての枠 | 最低賃金の地域別最低額は、厚生労働省のホームページで確認可能。 |
SECURITY ACTION | IPAの「SECURITY ACTION」で「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」の宣言を行っていない | 全ての枠 | 宣言を行い、申請情報をIT導入補助金事務所とIPAの共有に同意すること。 |
みらデジ | 交付申請前に「みらデジ経営チェック」を実施していない | 全ての枠 | チェックは、「みらデジ」の公式サイトで実施可能。 |
えるぼし | 「えるぼし」関連の認定または女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」を公表していない | 通常枠(A類型・B類型) | 詳細は、「えるぼし」の公式サイトで確認可能。 |
くるみん | 「くるみん」関連の認定または次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表していない | 通常枠(A類型・B類型) | 詳細は、「くるみん」の公式サイトで確認可能。 |
書類不足 | 交付申請に必要な書類を添付していない | 全ての枠 | 必要な書類は、公募要領で確認可能。 |
労働生産性 | 労働生産性の1年後の伸び率が3%以上および3年後の伸び率が9%以上の計画の根拠を提示していない | 通常枠(A類型・B類型) | 根拠は、具体的な数値目標や導入するITツールの効果などを説明すること。 |
事務局への報告 | IT導入支援事業者と協力のうえ、インボイス制度への対応状況等に係る情報を事務局に報告していない | デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入型) | 報告は、IT導入支援事業者と協力しておこなうこと。 |
労働生産性の伸び率 | 労働生産性の伸び率が3年後に3%以上実現する合理的な数値目標を作成していない | セキュリティ対策推進枠 | 目標は、具体的な数値に基づいて設定すること。 |
証拠書類の情報の報告 | 補助事業者と取引先との間で、インボイス制度に対応した取引の実施やITツールを継続的に活用している証拠書類等の情報を事務局に報告していない | デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型) | 報告は、取引先との契約書やITツールの利用履歴などを添付すること。 |
申請要件は、公募回によって更新されることがあるため、申請前に必ず最新の公募要領を確認してください。
必要書類の不備
IT導入補助金の申請では、必要書類をすべて正しく添付することが重要です。
不備があると不採択となる可能性があり、せっかくの申請が無駄になってしまうため、注意が必要です。
以下は、必要書類の不備例と解説です。
項目 | 内容 | 解説 |
履歴事項全部証明書 (法人の場合) | 複数枚を圧縮して一枚の画像として提出していない | すべてのページを1つのPDFにまとめて提出すること。 |
納税証明書 | 納税証明書その1、その2を提出していない | 直近の納税証明書「その1納税額等証明用」または「その2所得金額用」が必要。 |
身分証明書 | 有効期限が切れている、または、住所が交付申請書と異なる | 有効期限内のもの、交付申請書と同じ住所のものを提出すること。 |
確定申告書 | 確定申告書Bで令和4年分ではない書類を提出する (IT導入補助金2023の場合) | 申請年度分の正しい書類を提出すること。 |
<必要書類の不備を避けるために重要なポイント>
・交付申請の手引きをよく確認 各書類の提出方法や必要事項などが詳しく記載されています。 ・必要書類を早めに準備 書類の取得に時間がかかる場合もあるので、余裕をもって準備しましょう。 ・提出前に書類をすべてチェック 漏れや不備がないか、きちんと確認しましょう。 |
上記の例以外にも、さまざまな理由で不採択になる可能性があります。
申請前に必ず最新の公募要領を確認し、すべての要件を満たしていることを確認してください。
IT導入補助金の申請対象は、日本国内で事業を営む中小企業・小規模事業者などです。
しかし、一定の条件に該当する事業者は申請対象外となります。
以下に、申請対象外となる事業者の実例を挙げます。
1.大企業が発行済株式総数や出資価格総額の2分の1以上を所有している中小企業・小規模事業者等 2.大企業が発行済株式総数や出資価格総額の3分の2以上を所有している中小企業・小規模事業者等 3.大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者等 4. 上記1~3に該当する中小企業・小規模事業者等が発行済株式総数や出資価格総額を所有している中小企業・小規模事業者等 5.上記1~3に該当する中小企業・小規模事業者等の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業・小規模事業者等 6. 直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等 7.IT導入補助金2022において「IT導入支援事業者」に登録されている事業者(ただし、昨年度事業以前の事業にて登録されている場合を除く) 8.経済産業省又は中小企業庁から補助金等指定停止措置又は指名停止措置が講じられている事業者 9.風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定する「風俗営業」、「性風俗関連特殊営業」及び「接客業務受託営業」を営む事業者(一部例外あり) 10.過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者 11.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団等の反社会的勢力に関係者 12.宗教法人 13.法人格のない任意団体(例:同窓会、PTA、サークル等) 14.その他、本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁及び中小機構並びに事務局が判断する者 |
申請にあたって上記のいずれかに該当していないか、十分に確認する必要があります。
不採択を避けるためには、公募要領を入念にチェックすることが重要です。
公募要領には、申請要件や必要書類・注意点などが詳細に記載されています。
事務局への問い合わせでは、個別の案件に対する回答は得られません。
申請書類の提出前に必ず公募要領を隅々まで確認し、不明点や疑問点を解消しておくことを強くおすすめします。
公募要領を十分に理解することが、IT導入補助金の採択に向けた第一歩となるでしょう。
IT導入補助金の不採択を避けるためには、申請要件の充足や必要書類の準備・対象外事業者に該当しないことの確認が重要です。
また、公募要領を詳細に理解し、事前の自己確認をすることが採択への鍵となります。
事務局への個別の問い合わせでは回答が得られないため、入念な準備をして申請に臨みましょう。