現代のビジネスの環境では、ITの活用が成長の鍵となっています。
企業だけでなく個人事業主などの中小規模の事業者においても、IT環境の整備はとても重要で、デジタル技術の活用は、大きなビジネスチャンスに繋がります。こういったIT関連の導入をサポートをしてくれるのが「IT導入補助金」です。
IT導入補助金は、個人事業主を含む中小規模の事業者にとって、IT環境の向上と業務効率化の大きな助けとなります。しかし、どのようにしてこの補助金を申請し、最大限に活用するのか、そもそも個人事業主でも補助金の申請は可能なのか、など多くの疑問が残ります。
本記事では、個人事業主がIT導入補助金をうまく利用するための申請手順、必要な手続き、そして注意すべきポイントを具体的に解説します。ぜひ参考にしてください。
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がデジタル化を進める際の費用負担を軽減するための助成金です。この補助金は、RPAツールや基幹業務システムなどのITツール導入に伴うコストをカバーしてくれます。
経営上の課題や、売上向上を目的とした生産性の改善など、特定の目的に合わせて適切なITツールを選ぶ必要があり、補助金には「通常枠」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠」など、目的やツールの種類に応じた複数の申請枠があります。
ただし、補助の対象となるのは事前に事務局に登録されたITツールのみであり、中古品や交付決定前に購入されたものは含まれません。この助成金をうまく活用することで、あなたの事業のデジタル化を大きく加速させることができます。
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者に加え、特定の要件を満たす個人事業主も申請することが可能です。そもそもこの補助金は、ITツールの導入を支援し、事業の効率化と成長を促進することを目的としています。
本章では、申請対象者や申請枠、補助額に関して詳しく解説します。
IT導入補助金の対象となる「中小企業・小規模事業者」には、個人事業主も含まれます。
小規模事業者の定義は、業種によって異なり、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)では常勤従業員が5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業では20人以下、製造業その他の業種では20人以下の従業員を有する事業者が該当します。
個人事業主がこれらの基準に合致する場合、IT導入補助金の申請が可能となります。
ただし、日本国内で事業を運営しており、地域別の最低賃金以上を従業員に支払っていることなど、その他の条件も満たす必要があります。
IT導入補助金では、ビジネスのニーズに応じて複数の申請枠が用意されています。これにより、各企業や個人事業主は、自社の特定の要件に合わせて最適な補助を受けることができます。以下、5つの申請枠を解説します。
【参考】一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
通常枠(A類型・B類型):
通常枠は、多くの業種や業務に対応可能で、幅広いITツールの導入に対する補助を行います。A類型とB類型では、補助の規模や範囲が異なります。
インボイス枠(電子取引類型):
インボイス制度への対応を目的とした専用の受発注ソフトウェアなどの導入を支援する枠です。
インボイス枠(インボイス対応類型):
会計ソフトや受発注ソフト、それに伴うPCやタブレット、レジなどの購入を補助するための枠です。
複数社連携IT導入枠:
複数の企業が共同でITツールやサービスを導入する際の費用をサポートするための枠です。
セキュリティ対策推進枠:
サイバー攻撃対策としてのセキュリティサービスの導入を補助する枠です。
IT導入補助金を申請する際は、希望する補助が受けられるのか枠ごとにチェックする必要があります。次の章では、具体的な補助額、補助率を解説します。
IT導入補助金の補助額と補助率は、申請する枠と導入するツールによって異なります。各申請枠には特定の補助額範囲と補助率が設定されており、事業者はこれに基づいて計画を立てる必要があります。
具体的な補助額と補助率については、以下の表を確認してください。
/* テーブルとセルに枠線を適用するスタイル */ table { border-collapse: collapse; /* 隣り合うセルの境界線を合わせる */ width: 100%; /* テーブルの幅をページ全体に広げる */ } th, td { border: 1px solid black; /* 黒の1ピクセルの固定幅の境界線 */ padding: 8px; /* 内側の余白 */ text-align: left; /* テキストを左揃えに */ }枠 | 通常枠 | インボイス枠 | 複数社連携IT導入枠 | |||||||
電子取引類 | インボイス対応類 | |||||||||
補助事業者 | 中小企業・小規模事業者 | 大企業 | 中小企業・小規模事業者 | |||||||
補助額 | 5万円〜150万円未満 | 150万円〜450万円以下 | インボイス精度に対応した受注ソフト | インボイス精度に対応した会計受発注ソフト | PC・タブレット等 | レジ・販売機等 | ||||
〜350万円 | 50万円以下 | 50万円〜350万円 | 〜10万円 | 〜20万円 | ||||||
補助率 | 2分の1 | 3分の2 | 2分の1 | 5分の4 | 3分の2 | 2分の1 | ||||
対象経費 | ソフトウェア購入費 | クラウド利用料:最大2年 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費、導入関連費、ハードウェア購入費 |
続いて、IT導入補助金を個人事業主が申請する際の2つのポイントを解説します。
・個人事業主が申請に必要な書類
・IT導入補助金は複数回の公募がある
個人事業主がIT導入補助金を申請する際に必要な書類は主に3つあります。
それぞれ確認しましょう。
1. 運転免許証、運転経歴証明書、または住民票
・運転免許証は有効期限内に限る
・運転免許証の裏面に変更の履歴がある場合は提出が必要
・住民票は登録申請日からさかのぼって3か月以内の発行に限る
2. 直近の所得税納税証明書(その1またはその2)
・税務署の窓口発行されているものに限る
・電子納税証明証の場合、交付請求時のフォーマットに限る
・最も直近に発行されたものに限る
3. 前年分の確定申告書(例:2023年の申請の場合は2022年分)
・税務署で受領が確認されているものに限る
【引用】サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局:交付申請の手引き
IT導入補助金は年に複数回の公募を行っており、2023年のスケジュールは以下の通りでした。
・通常枠::1次締切 4月25日、2次締切 6月2日
・デジタル化基盤導入枠: 1次締切 4月25日、2次締切 5月16日、3次締切 6月2日
・セキュリティ対策推進枠: 1次締切 4月25日、2次締切 6月2日
2024年の最新のスケジュールはまだ確定していませんが、今後の情報は「IT導入補助金の公式サイト」で随時更新される予定です。
IT導入補助金の申請方法を以下の7ステップで解説します。
それぞれのステップの詳細を解説していきます。
IT導入補助金を利用する際、初めに行うべきは適切なIT導入支援事業者と必要なITツールの選択です。このステップでは、自社の規模、現在抱えている課題、将来の目指す方向をもとに考えることが大切です。
様々なITツールの中から、業務の効率化を支援する会計ソフト、顧客関係管理(CRM)システム、電子文書管理システム、プロジェクト管理ツールなどを選ぶことが可能です。これらを選定し導入することにより、業務の効率化、コストの削減など事業の成長が見込めます。
続いてのステップでは、「gBizIDプライム」・「SECURITY ACTION」・「みらデジ」への対応をする必要があります。
GビズID(gBizID)とは、法人や個人事業主が政府サービスを利用する際に必要となる共通認証システムです。補助金を申請するためには「gBizIDプライム」アカウントを取得する必要があります。
加えて、情報処理推進機構の「SECURITY ACTION」への参加が求められます。
「SECURITY ACTION」は中小企業が情報セキュリティ対策を自ら宣言する制度で、特別な準備は特に必要ありません。
また、2023年度から「みらデジ」ポータルサイトでgBizIDに登録し、経営状態のチェックが必要になっています。「みらデジ」は、中小企業庁が提供する経営課題解決支援制度です。
これら全ての手続きはオンラインで完結しますので、確実に対応しておきましょう。
続いて、交付申請を行います。
IT導入補助金の交付申請の手順は、IT導入支援事業者と協力して行う必要があります。
まず、申請者はIT導入支援事業者と商談をして、必要な事業計画を作成します。次に、IT導入支援事業者から『申請マイページ』への招待を受け取り、そこで代表者氏名などの基本情報などを入力します。
最後に同ページ上で必要な書類のアップロードと入力を完了し、IT導入支援事業者がITツール情報と事業計画値を入力します。「申請マイページ」で全ての入力内容を確認し、宣誓を行った後に事務局に申請書類を提出することで完了します。
申請手続きが完了すると、事務局で審査が行われます。
上記の対応は、IT導入補助金の公式サイトで行うことができ、スムーズな申請のためには事前の準備が重要です。
【参考】交付申請の手引き | サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局
交付の決定通知は、事務局から『申請マイページ』を通じて通知されます。重要なのは、交付決定前に行われた契約、発注、納品、請求は補助金の対象外となるため、補助金の交付が決定されるまでこれらの行為を控える必要がありますので要注意です。
交付決定の連絡を受けた後、IT導入支援事業者と連携し、補助事業の実施に取り掛かります。
事業が完了した際には、補助金の正当性を証明するための報告書を提出する必要があるため、請求書やその他の証明書類を大切に保管しておくことが大切です。
注意点として、交付前に契約をした経費は補助されませんので確認しておきましょう。
補助事業の成果報告は、補助金の申請時に使った『申請マイページ』で行われ、主に補助事業者が担当します。このステップでは、IT導入支援事業者と補助事業者が連携し、補助金の使用状況や事業の成果に関する報告書を作成し、補助事業者が提出します。
報告書提出後、事務局は補助金の最終内容に関して補助事業者からの承認を要求します。補助事業者は『申請マイページ』で確定検査結果と補助金の決定額を確認し、これに同意します。
承認が完了すると補助金の交付が正式に決定し、約1か月以内に補助金が支給されます。注意点として、補助金の支払いは事務局から補助事業者へ直接行われるのではなく、IT導入支援事業者を介して行われます。
補助事業完了後、事業者は事務局への成果報告が必要です。報告内容には、実施した事業の具体的な成果や目標達成の進行状況を記載します。
報告頻度は選択された補助金の申請枠によって異なり、通常枠を選択した場合は、2023年以降3年間にわたり年1回の報告が必要です。
事業の実施効果報告は、補助事業の成果評価や今後の事業戦略の参考にもなるため非常に重要です。
IT導入補助金を利用する際、募集期間や申請の条件など、注意点を把握しておく必要があります。
・複数の枠に申請してもOK
・パソコンなどのデバイスも対象になる?
・ホームページ作成には注意が必要
上記3つの注意点について、それぞれ解説していきます。
IT導入補助金では、複数の枠に同時に申請することが可能です。例えば、デジタル化基盤導入類型と通常枠は異なる補助金として扱われるため、それぞれに申請することができます。
ただし、複数の枠への申請はそれぞれ異なる事業であり、重複していないことが条件となります。ですので各枠で提案する事業内容を事前に検討し、適切に申請を行うことが大切です。
IT導入補助金では、一般的にパソコンなどのデバイスは補助の範囲外とされてることが多いです。
しかし、これらがIT導入の重要なツールとして計画に組み込まれる場合、補助金の対象となることがあります。
たとえば、顧客管理のためのシステムを導入する際に、その運用に必須となるパソコンやタブレットは補助の対象に該当します。ここでのポイントは、これらのデバイスが単独で使用されるのではなく、ビジネスの全体的な過程に組み込まれ、システム全体の効率化や機能向上に関係していることです。
IT導入補助金を使用してホームページを開発する際、その対象になるかどうかは状況によって異なりますので注意が必要です。
補助金を受けるためには、ウェブサイトが業務の効率化や生産性の向上を目的としている必要があります。
単なるマーケティングのためのウェブサイト構築は支援の対象外となりやすいですが、電子商取引(EC)サイトの開発や既存の顧客管理システムとの統合を含むような、具体的なビジネスの目標に沿ったウェブサイトの開発は対象となる可能性が高くなります。
業務のデジタル化は、個人事業主にとっても重要なテーマです。IT導入補助金は、業務効率化や自動化を目指す個人事業主にとって、とても有益な内容となっています。
IT導入補助金には、個人事業主が利用できるいくつかの申請枠が設けられており、対象となるITツールには特定の基準がありますので、しっかり確認しておきましょう。
こういった制度をうまく活用し、自らの事業やニーズに最適なITツールを選定し、導入することで、事業の売上拡大、生産性向上を目指していきましょう。
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