2024年以降、更にビジネスのデジタル化が進む中で、多くの事業者が注目するのが「サービス等生産性向上IT導入支援事業(以下、IT導入補助金)」です。IT導入補助金を活用してITツールを導入することでビジネスの効率化を図ることができます。
個人事業主から中小企業はもちろん、一部大企業も含めて、幅広い事業者が利用可能なので、機会損失がないようしっかり把握しておきましょう。
本記事では、IT導入補助金の対象者や申請方法から、導入によって得られるメリットを具体的に解説します。
また、IT導入補助金の申請の際に注意しておいた方がいい3つのポイントについても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
IT導入補助金は、RPAツールや基幹業務システムなど、ビジネスに必要なITツールを導入する際の費用を支援する制度です。中小企業や小規模事業者が、自社のニーズに合わせてITツールを使って生産性を高めたり、売上を伸ばしたりする場合、この補助金が大きなメリットとなります。
補助金にはいくつかの申請カテゴリがあり、例えば「通常枠」、「セキュリティ対策推進枠」、「デジタル化基盤導入枠」などがあります。導入したいツールや目的に応じて、適切なカテゴリを選んで申請します。
ただし、補助金を受け取るには、事前に事務局に登録されているITツールを選ぶ必要があり、中古品や補助金の交付決定前に購入したツールは補助の対象外なので、その点は注意が必要です。
2024年(令和6年度)に実施されるIT導入補助金は、今まで同様、中小企業や小規模事業者が自社の課題に応じたITツールを導入するための支援を目的としています。この補助金は、生産性向上とビジネスプロセスの効率化を図るための重要な手段です。2024年の2月中旬より新たな申請受付が開始される予定です。
中小企業等の労働生産性を高めるため、業務の効率化、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、サイバーセキュリティ対策、そして新たなインボイス制度への対応など、多岐にわたる分野でのITツール導入が支援されます。日常のルーティン業務を効率化するツールや、情報を一元管理するクラウドシステムなど、バックオフィスの業務効率化やデータを活用した顧客獲得に貢献する汎用性の高いITツールの導入が可能です。
補助対象となる費用には、ITツールの導入費用、ITコンサルティング費用、システム改修費用などが含まれます。特に、複数の業務プロセスを非対面化し、業務形態の大幅な転換を可能にするITツールの導入に重点を置いています。
この補助金は、業務の効率化だけでなく、企業のデジタル化推進、安全な情報管理体制の構築、そして税制面での変更への適応を支援するための重要な資金源となります。2024年度のIT導入補助金は、中小企業が直面する現代のビジネス環境における課題に対応し、競争力の強化を図るための強力なサポートとなります。
【参考】中小企業庁
枠 | 通常枠 | インボイス枠 | 複数社連携IT導入枠 | |||||||
電子取引類 | インボイス対応類 | |||||||||
補助事業者 | 中小企業・小規模事業者 | 大企業 | 中小企業・小規模事業者 | |||||||
補助額 | 5万円〜150万円未満 | 150万円〜450万円以下 | インボイス精度に対応した受注ソフト | インボイス精度に対応した会計受発注ソフト | PC・タブレット等 | レジ・販売機等 | ||||
〜350万円 | 50万円以下 | 50万円〜350万円 | 〜10万円 | 〜20万円 | ||||||
補助率 | 2分の1 | 3分の2 | 2分の1 | 5分の4 | 3分の2 | 2分の1 | ||||
対象経費 | ソフトウェア購入費 | クラウド利用料:最大2年 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費、導入関連費、ハードウェア購入費 |
2024年度のIT導入補助金における「通常枠」は、中小企業や小規模事業者が生産性向上に寄与するITツール(ソフトウェアやサービス)を導入する際の費用を支援します。この補助金では、クラウドサービスの利用料を最大2年間分支援するとともに、保守や運用に関わる導入関連費用もカバーします。
補助金額は、ITツールの業務領域に応じて異なり、業務領域が1から3までの場合、補助金の範囲は5万円から150万円未満とされています。一方、業務領域が4以上の場合、補助金の範囲は150万円から450万円以下に設定されています。いずれの場合も補助率は1/2です。
・業務領域1〜3:5万円〜150万円未満
・業務領域4以上:150万円〜450万円以下
※補助率1/2
具体的な活用例として、中小規模の小売業者における在庫管理システムの導入などが考えられます。このシステムの導入により、今まで手作業で行っていた在庫の記録や管理が自動化され、在庫の正確な把握が可能になります。これにより、過剰在庫や品切れのリスクが減少し、発注プロセスの効率化が実現します。
インボイス制度への対応に特化した支援枠「インボイス枠」は、2024年10月1日から開始された新しい税制への適応を支援するために設計されています。
この枠では、会計、受発注、決済ソフトウェアに加えて、PC、タブレット、レジスター、券売機などのハードウェア導入費用も支援対象となります。特に、小規模事業者に対しては、補助率を最大4/5まで引き上げ、補助下限を設けず、安価なITツール導入も支援できることが特徴です。
インボイス枠は「電子取引類型」と「インボイス対応類型」の2つの枠に分類されるのでそれぞれ解説していきます。
電子取引類型は、取引における発注側(大企業を含む)がコストを負担し、インボイスに準拠した受発注ソフトウェアを導入することを支援します。この取り組みにより、中小企業や小規模事業者を含む受注側は、これらの先進的なシステムを無料で活用できるようになります。
補助上限額は最大350万円までとなっており、補助率は中小企業が2/3、大企業が1/2です。これにより、受発注プロセスのデジタル化を推進し、取引効率の向上を図ることができます。
活用事例として、食品卸売業者が、大手スーパーマーケットチェーンからの発注をスムーズに処理するため、電子取引類型の補助を用いて最新の受発注システムを導入します。これにより、注文の処理速度が向上し、誤発注が減少。結果として、ビジネスの効率性が大幅に改善されることが想定されます。
インボイス対応類型では、会計・受発注・決済ソフトウェアの導入を含め、それらを利用するためのハードウェア導入費用も支援されます。この類型は、新しいインボイス制度への対応を主な目的としています。
会計・受発注・決済ソフトウェアについては、50万円以下であれば中小企業には3/4、小規模事業者には4/5の補助率が適用されます。金額が50万円を超える場合は、補助率2/3で支援されます。また、PCやタブレット等に関しては最大10万円、レジや券売機に関しては最大20万円までの支援が可能で、これらには1/2の補助率が適用されます。
活用事例として、CRMシステムの導入により、顧客データの管理と分析が効率化され、個別化されたマーケティング戦略が可能になります。結果として、競争力と顧客満足度が同時に向上することが見込まれます。
2024年度のIT導入補助金では、「複数社連携IT導入枠」が設けられています。この枠は、複数の中小企業や小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入することを支援し、地域DXの実現や生産性の向上を目指すものです。対象事業者には商工団体や地域のまちづくり、商業活性化、観光振興などを担う中小企業者や団体、コンソーシアムが含まれます。
連携してインボイス制度への対応やキャッシュレス決済の導入を行う取り組みを支援し、連携のための事務費や専門家費も補助対象となります。補助金の上限額は、グループ構成員数に応じて50万円×構成員数で、最大3,000万円までとなっています。補助率はインボイス対応類型と同様で2/3です。
活用事例として、10社以上の中小企業や小規模事業者が連携して、共通のキャッシュレス決済システムやインボイス対応の会計システムを導入する場合が挙げられます。これにより、地域全体での効率的な経済活動が促進され、デジタル化による生産性の向上が期待されます。
「セキュリティ対策推進枠」は、「独立行政法人情報処理推進機構(IPA)」が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているセキュリティサービスの利用料を支援する枠です。この枠における補助金の上限額は5万円から100万円までとされており、補助率は1/2です。
この枠を活用することで、中小企業や小規模事業者は自社のセキュリティ体制を強化することができます。特に、サイバーセキュリティの脅威が増大する現代において、適切なセキュリティ対策の実施は企業運営において必須の要素となっています。
セキュリティ対策推進枠を活用し、中小企業がサイバーセキュリティ対策を強化する場合、IPAのリストに掲載されたセキュリティサービスの導入が考えられます。これにより、企業の情報セキュリティレベルが向上し、サイバー攻撃に対するリスクを軽減することが可能になります。
IT導入補助金における対象事業者と対象外事業者の条件を解説します。
中小企業・小規模事業者等が補助の対象となりますが、特定の条件を満たす企業や個人事業主は対象外となりますので参考にしてください。
補助金の対象となる事業者は、事業の規模や業種に基づいて要件が定められています。
・常時稼働している従業員の数が300人以下の法人及び個人事業主
・資本金の額もしくはは出資の総額が3億円以下の法人
【参考】令和4年度第二次補正サービス等生産性向上IT導入支援事業
補助の対象外となる事業者
補助対象外の事業者は、以下の条件に該当する企業や個人事業主です。
1. 大企業が発行済株式や出資価格の2分の1以上を所有する中小企業・小規模事業者等
2. 大企業が発行済株式や出資価格の3分の2以上を所有する中小企業・小規模事業者等
3. 大企業の役員や職員が中小企業・小規模事業者等の役員総数の2分の1以上を占めるケース
4. 上記1~3に該当する中小企業・小規模事業者等が所有する他の中小企業・小規模事業者等
5. 上記1~4に該当する中小企業・小規模事業者等の役員や職員が全役員を占めるケース
6. 過去3年間の平均課税所得が15億円を超える中小企業・小規模事業者等
これらの条件を満たす事業者は、IT導入補助金の申請資格を持たないことになりますので注意が必要です。
IT導入補助金の申請プロセスは、いくつかの重要なステップに分かれています。ここでは、それぞれのステップを順を追って説明します。
IT導入補助金を活用する際、最初のステップは適切なIT導入支援事業者と必要なITツールを選定することです。この選定プロセスでは、事業の規模、現在直面している課題、および将来のビジネスの目標を踏まえて検討することが重要です。
ITツールには、効率的な業務遂行を支援する会計ソフトウェア、顧客管理システム(CRM)、電子文書管理システム、プロジェクト管理ツールなどがあります。最適なツールを選定することで、業務プロセスの効率化、コスト削減、ビジネスの加速が期待できます。
続いてのステップでは「gBizIDプライム」・「SECURITY ACTION」・「みらデジ」への対応が必要です。
GビズID(gBizID)は、法人や個人事業主が行政サービスを利用するための共通認証システムです。補助金申請には「gBizIDプライム」アカウントの取得が必須です。さらに、独立行政法人情報処理推進機構の「SECURITY ACTION」宣言も必要になります。
これは中小企業が自ら情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言する制度で、特別な準備は必要ありません。また、2023年度からは「みらデジ」ポータルサイトにgBizIDで登録し、「経営チェック」を行うことが求められます。
「みらデジ」は中小企業庁が提供する、経営課題のデジタル化解決をサポートする制度です。これらの手続きはオンラインで簡単に完了でき、一切費用もかかりませんのでぜひ対応しておきましょう。
3つ目のステップでは交付申請を行います。
IT導入補助金の交付申請の手順は、IT導入支援事業者と協力して行うことが前提です。まず、申請者はIT導入支援事業者と商談をして、必要な事業計画を作成します。次に、IT導入支援事業者から『申請マイページ』への招待を受け取り、そこで代表者氏名などの基本情報を入力します。
その後、同ページ上で必要な書類のアップロードと入力を完了し、IT導入支援事業者がITツール情報と事業計画値を入力します。最終的に、『申請マイページ』で全ての入力内容を確認し、宣誓を行った後に事務局に申請書類を提出します。
申請手続きが完了すると、事務局で審査が行われます。
ここまでの対応は、IT導入補助金の公式サイトで行うことができ、スムーズな申請のためには事前の準備が重要です。
【参考】交付申請の手引き | サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局
交付の決定は、事務局から『申請マイページ』を通じて通知されます。重要なのは、交付決定前に行われた契約、発注、納品、請求は補助金の対象外となるため、補助金の交付が決定されるまでこれらの行為を控える必要がありますので要注意です。
交付決定を受けた後、IT導入支援事業者と連携し、補助事業の実施に取り掛かります。事業完了後には、補助金の正当性を証明するための報告書を提出する必要があるため、請求書やその他の証明書類を大切に保管しておくことが重要です。
また、交付前に契約をした経費は補助されませんので注意しておきましょう。
補助事業の実績報告は、補助金申請時に使用した『申請マイページ』で実施され、主に補助事業者がこの対応を行います。この段階で、IT導入支援事業者と補助事業者が協力して、補助金の使用状況や事業の成果に関する報告書を作成し、補助事業者が提出します。
報告書が提出された後、事務局は補助金の確定内容について補助事業者に承認を求めますので、補助事業者は『申請マイページ』から確定検査の結果および補助金の交付決定額を確認し、その内容を確認します。
承認が完了すると、補助金の交付が確定し、約1か月後に補助金が交付されます。ただし、補助金の支払いは事務局から直接補助事業者に行われるのではなく、IT導入支援事業者を通じて行われますのでご注意ください。
補助事業が完了した後、事業者は事務局に対して事業の成果や目標達成度に関する報告を行う必要があります。
この報告では、実施された事業によって得られた具体的な効果や数値目標の進捗が求められます。報告の頻度は、申請した補助金の枠によって異なり、通常枠では2023年以降、3年間にわたって年1回の報告が求められます。
実施効果報告は、補助事業の成果を評価し、今後の事業運営の参考とするためとても重要です。
IT導入補助金を利用する際には、募集期間や申請の条件など、いくつかの重要な注意点を理解しておく必要があります。
・複数の枠に申請してもOK
・パソコンなどのデバイスも対象になる?
・ホームページ作成には注意が必要
それぞれ解説していきます。
IT導入補助金では、同時に複数の枠に申請が可能です。例えば、デジタル化基盤導入類型と通常枠は異なる補助金として扱われるため、それぞれに申請することができます。
ただし、複数の枠への申請はそれぞれ異なる事業であり、重複していないことが条件です。したがって、各枠で提案する事業内容を事前に検討し、適切に申請を行うことが大切です。
IT導入補助金では、一般的にパソコンやタブレットのようなデバイスは補助の範囲外とされてることが多いです。しかし、これらがシステム導入の重要なツールとして計画に組み込まれる場合、補助金の対象となることがあります。
たとえば、顧客管理のためのシステムを導入する際に、その運用に必須となるパソコンやタブレットは補助の対象に該当します。ここでのポイントは、これらのデバイスが単独で使用されるのではなく、ビジネスの全体的なプロセスに統合され、システム全体の効率化や機能向上に寄与することです。
IT導入補助金を使用してウェブサイトやホームページを開発する際、その対象になるかどうかは状況によって異なります。補助金を受けるためには、ウェブサイトが業務の効率化や生産性の向上を目的としている必要があります。
単なるマーケティングのためのウェブサイト構築は支援の対象外となりやすいですが、電子商取引(EC)サイトの開発や既存の顧客管理システムとの統合を含むような、具体的なビジネスの目標に沿ったウェブサイトの開発は対象となる可能性が非常に高くなります。
IT導入補助金を利用する際は、募集期間のチェック、複数枠への申請をどうするか、デバイスの取り扱いやホームページ作成の条件など、多くの重要な点を考慮する必要があります。
補助金は特定の期間内に申請する必要があり、さまざまな枠での申請が可能ですが、事業内容の重複には注意が必要です。
また、パソコンやタブレットはシステム導入の一部として申請する場合に限り補助対象になりますので、ホームページの作成も業務効率化や生産性向上を目的とする場合に限られます。
上記のようなポイントに注意する必要はありますが、事業の拡大を目指す際に補助金は非常に大きな助けになります。1つ1つ確認しながら、適切に補助金を活用していきましょう。
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