「事業展開等リスキリング支援コース」は、企業が新規事業の展開や従業員のスキル強化を支援する助成金制度です。
本記事では、コースの概要、助成金額、申請手順、支援対象となる訓練内容、注意点などを詳しく解説します。
企業の成長戦略に寄与するリスキリング支援を活用し、競争力強化を図りましょう。
人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップや能力向上に対して投資している事業者を支援するための助成制度で、厚生労働省が提供しています。
この助成金制度の目的は、企業が従業員に対して業務関連の訓練や研修を実施する費用を助成し、企業を支援するとともに競争力を高めることです。
事業展開等リスキリング支援コースは、新しい分野への事業展開やデジタル化(DX)、環境対応(GX)にともなう人材のリスキル(再教育)を支援するコースです。
例えば、製造業がDXにより生産プロセスを効率化する場合や、小売業がデジタル化に対応した新しいマーケティングスキルを必要とする場合に、このコースを活用できます。
支援の対象範囲には、正社員だけでなく、契約社員やパートタイムの従業員も含まれているため、多様な雇用形態の人材が新しい分野に適応するためのスキルを身につけられるでしょう。
事業展開等リスキリング支援コースは、企業の競争力強化と持続的な成長を支える重要な支援策です。
事業展開等リスキリング支援コースを利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
ここでは、基本的な利用条件と対象分野について詳しく説明します。
事業展開等リスキリング支援コースを利用するためには、以下の基本条件を満たす必要があります。
これらの条件を満たした上で、訓練開始日から起算して1ヵ月前までに職業訓練実施計画届を管轄の労働局に提出する必要があります。
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)
支援対象となる分野は、以下の3つの類型に分類されます。
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)
各分野において、eラーニングや通信制講座・集合研修など、さまざまな形態での職業訓練を実施できます。
また、定額制サービスによる訓練も活用可能で、企業の実情に合わせた柔軟な人材育成が可能です。
事業展開等リスキリング支援コースの助成内容は、経費助成と賃金助成の2種類があります。
【経費助成】
【賃金助成(1人1時間あたり)】
ただし、経費助成には訓練時間数に応じた支給限度額が設定されています。
訓練時間による上限額(中小企業の場合)は、次のとおりです。
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版) 支給要領(6)事業展開等リスキリング支援コース
【具体例】
中小企業が10名の従業員に対して、1人あたり100時間の訓練を実施した場合。
合計で133.5万円の助成を受けることが可能
なお、定額制サービスによる訓練の場合は、1人1月あたり2万円が上限です(令和6年10月改正)。
eラーニングや通信制による訓練は「経費助成のみ」が対象なので、注意しましょう。
本コースの支給対象となる事業主と労働者の要件は以下のとおりです。
【対象となる事業主の要件】
【対象となる労働者の要件】
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版) 支給要領(6)事業展開等リスキリング支援コース
雇用形態については、正社員に限らず、契約社員やパートタイム労働者も、雇用保険の被保険者であれば対象です。
また、育児休業中の者に対する訓練も、一定の要件を満たせば対象。
ただし、役員や雇用保険の被保険者でない従業員は対象外なので注意が必要です。
事業展開等リスキリング支援コースでは、すべての訓練が助成対象になるわけではありません。
助成金の対象外となる訓練や条件があるため、申請の際には注意が必要です。
具体的には、基本的なパソコン操作のような初歩的なスキル習得や、既存のアプリやシステムを使用するための操作方法のみを学ぶ訓練は対象外です。
また、コンサルタントによる単なる指導や助言も助成の対象には含まれません。
さらに、業務外で実施されるOFF-JT訓練であっても、実訓練時間が10時間未満の場合は助成の対象外です。
また、定額制サービスを利用した場合、標準学習時間が10時間以上に達しない場合も助成対象にはならないため、訓練計画の作成時にこれらの基準を確認しておきましょう。
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)
事業展開等リスキリング支援コースの申請から受給までの基本的な流れは以下のとおりです。
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金 支給要領(6)事業展開等リスキリング支援コース
以上が助成金申請の基本的な流れです。
1~4までを丁寧に進めることで、スムーズな申請と受給ができるでしょう。
助成金申請の第一歩は、効果的な訓練計画の作成です。
計画を立てる際には、次の点を意識しましょう。
目標設定 | 習得するスキルと期待する成果を明確化 |
ニーズ把握 | 従業員や事業部門のニーズに基づく適切な訓練内容の選定 |
内容の具体化 | 訓練内容・期間・対象者・費用・評価方法などの詳細な記載 |
関連性の明確化 | 訓練内容と事業展開、DX・GX推進との関連性を明示 |
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)
計画届出時には、職業訓練実施計画届(様式第1-1号)と事業展開等実施計画(様式第2号)などの添付書類が必要です。
作成した訓練計画は、職業訓練実施計画届とともに管轄労働局に提出します。
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金 支給要領(6)事業展開等リスキリング支援コース
訓練は、承認された計画に基づいて実施してください。
変更が生じた場合は、速やかに変更届を提出しましょう。
訓練記録や領収書など、支給申請に必要な書類は適切に保管してください。
支給申請は、訓練終了日の翌日から2ヵ月以内におこないます。
必要書類には、支給申請書・訓練実施状況報告書・経費の領収書・賃金台帳などがあります。
定額制サービスの場合は、訓練実施期間中に申請が可能です。
申請書類に不備があると、審査の遅れや、助成金が支給されない場合があります。
提出前に、必要書類がすべて揃っているか、記入漏れや誤りがないかを丁寧に確認しましょう。
【参考】厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版) 支給要領(6)事業展開等リスキリング支援コース
厚生労働省の人材開発支援助成金に加え、経済産業省も企業のリスキリングを支援するさまざまな施策を展開しています。
【主な支援施策】
【参考】独立行政法人情報処理推進機構(IPA)マナビDXとは
【参考】経済産業省 第四次産業⾰命スキル習得講座(Reスキル講座)認定制度〜制度説明資料〜 リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 申請をご検討の事業者
例えば「事業展開等リスキリング支援コース」で助成を受けながら、経済産業省の施策を活用することで、デジタル人材育成や成長産業分野への進出を効果的に支援できます。
それぞれの施策の特徴を理解し、自社にとって最適な組み合わせをみつけましょう。
「マナビDX」は、経済産業省が提供するデジタルスキル習得のための学習プラットフォームで、企業や個人のリスキリング支援が目的です。
このプラットフォームでは、豊富なオンライン学習コンテンツが提供され、ITやデジタル分野の基礎から専門知識まで幅広いスキルを習得できます。
また、利用者のスキルレベルを可視化し、企業の人材ニーズとマッチングする機能が備わっているため、効果的なスキルアップが図れます。
課題解決型の実践的な学習機会も提供され、企業はこのプラットフォームを通じて社内のデジタル化を加速できるでしょう。
【参考】独立行政法人情報処理推進機構(IPA)マナビDXとは
未来の成長が見込まれる産業分野において必要とされるスキルを身につけるための講座を「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」(Reスキル講座)として経済産業省が認定しています。
この認定制度は、新たな産業や技術分野で活躍できる人材育成を支援するために設けられました。
認定講座を受講すると、変化の激しい時代に必要とされる高度な専門知識や実践的なスキルが習得可能です。
例えば、GX分野やデジタル分野など、多岐にわたる講座が用意されています。
自社の事業戦略や人材育成ニーズに最適な講座を選択しましょう。
【参考】経済産業省 第四次産業⾰命スキル習得講座(Reスキル講座)認定制度〜制度説明資料〜
「事業展開等リスキリング支援コース」は、企業が新たな事業展開やデジタル・グリーン化に対応するため、従業員のスキル向上をサポートする助成金制度です。
労働保険の加入や訓練計画の策定を前提とし、助成率や対象となる訓練内容が明確に規定されています。
さらに、経済産業省の支援策と組み合わせることで、企業はデジタルや成長産業に対応したスキルを従業員に提供しやすくなります。
この助成金制度を活用し、企業の競争力強化を図り、持続可能な成長に向けた人材育成を実現しましょう。
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