キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を正社員化したり、労働条件を改善したりすることで企業が受けられる助成金です。
本記事では、キャリアアップ助成金の基本情報から対象となる企業や申請手続き、主なコースとその支給内容、さらに注意点まで詳しく解説します。
企業の成長と労働環境の改善を目指す方は必見です。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者(有期雇用・短時間労働者・派遣労働者など)の正社員化や処遇改善を促進するために設けられた厚生労働省の助成制度です。
この制度を利用することで、企業が労働者のキャリアアップに向けた取り組みをおこなった際、費用面での支援を受けられます。
制度の目的は、安定した雇用環境の確保と労働市場の質的向上です。
少子高齢化や労働人口減少が進むなかで、非正規雇用者のスキルアップや処遇改善が社会的課題となっていて、本助成金はその解決策の一環として位置付けられています。
企業にとっては、非正規雇用者のモチベーション向上や定着率向上を図りながら、生産性の向上と優秀な人材の確保が期待できる制度です。
キャリアアップ助成金を利用するには、対象事業者が一定の要件を満たさなければなりません。
基本的には、雇用保険適用事業所の事業主が対象です。
【対象事業者の要件】
必須要件 | 内容 |
雇用保険 | 雇用保険適用事業所の事業主 |
管理者設置 | 事業所ごとにキャリアアップ管理者を設置している |
計画認定 | キャリアアップ計画を作成し労働局長の認定を取得している |
書類整備 | 労働条件や賃金支払い状況を明確に示せる |
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
助成金の適用には、労働条件や賃金算出方法が明確で、過去1年間に労働関係法令違反がないことなど、法的な要件を満たす必要もあります。
この助成金は、非正規雇用者の処遇改善に向けた企業の取り組みを支援するもので、多くの事業者が活用可能です。
キャリアアップ助成金は、幅広い業種で利用可能な制度です。
小売業やサービス業、製造業などでは利用頻度が高く、これらの業界での正社員化や賃金規定の改定などが多くの企業で取り組まれています。
さらに、医療法人やNPO法人といった公益性の高い事業体も助成金の対象です。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ助成金の受給条件は、企業規模によって異なります。
中小企業の場合、小売業なら資本金5,000万円以下または従業員50人以下といった基準があり、大企業より助成額が高めに設定されています。
【中小企業の場合】
業種 | 資本金 | 従業員数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
一方、大企業は資本金や従業員数が中小企業基準を超える場合が対象で、支給額は中小企業の3/4程度におさえられています。
このように、企業規模に応じた要件や助成額の違いがあるため、自社が該当する分類を確認し、最適な活用を検討しましょう。
令和6年度のキャリアアップ助成金は、6つのコースで構成されています。
各コースは企業の取り組み内容や目的に応じて選択ができて、要件を満たせば複数のコースを組み合わせることも可能です。
支給額は中小企業と大企業で異なり、中小企業の方が高い助成額が設定されています。
また、一部のコースでは加算措置が設けられ、特定の条件を満たすことで上乗せ支給を受けられます。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
有期雇用労働者や無期雇用労働者を正社員に転換する制度を規定し、実際に正社員化した場合に助成されるコースです。
中小企業の場合、有期雇用から正社員化で1人あたり80万円(40万円×2期)、無期雇用から正社員化で40万円(20万円×2期)が支給されます。
1年度の支給申請上限は1事業所あたり20人です。
また、多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)への転換も対象です。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
障害者正社員化コースは、障害のある有期雇用労働者を正社員化する取り組みを支援する制度です。
例えば、重度の身体障害者や精神障害者を正社員化する場合、中小企業では最大120万円、大企業では90万円が助成されます。
この制度は、障害者の雇用促進を目指し、社会的包摂と企業のダイバーシティ推進に大きく貢献するコースです。
※キャリアアップ助成金における正社員化コースの支給申請上限人数には該当しません。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
有期雇用労働者等の基本給を3%以上増額改定し、実際に賃金を引き上げた場合に助成されます。
中小企業の場合、3%以上5%未満の増額で1人あたり5万円、5%以上の増額で1人あたり6万5,000円の支給。
職務評価の手法を活用して賃金規定などを改定した場合は、1事業所あたり20万円が加算されます。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
有期雇用労働者などに対して、正規雇用労働者と同じ職務に応じた賃金規定等を新たに作成し適用した場合に助成金が支給されます。
中小企業の場合、1事業所あたり60万円(大企業は45万円)の支給。
1事業所あたり1回限りの助成です。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
有期雇用労働者等に対して、賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積立を実施した場合に助成されます。
中小企業の場合、いずれか一方を導入すると40万円、両方を同時に導入すると56万8,000円の支給です。
なお、1事業所あたり1回限りの助成と規定されています。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
短時間労働者を新たに社会保険に加入させる際に、賃金の増額や労働時間の延長など、処遇改善を図った場合に助成を受けられるコースです。
中小企業の場合、手当等支給メニューで最大50万円、労働時間延長メニューで30万円、両メニューの併用の場合は最大50万円が支給されます。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ計画は、有期雇用労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるための重要な文書です。
計画作成のポイントをみていきましょう。
計画には次の内容を具体的に記載しましょう。
なお、計画内容は随時変更可能ですが、変更時には必ず「キャリアアップ計画変更届」を労働局に提出してください。
変更届が提出されていない場合、助成金を受給できない可能性があるため注意が必要です。
また、計画作成時には有期雇用労働者などを含む、すべての労働者の代表から意見を聴取し、計画に反映させましょう。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A
キャリアアップ助成金の申請は、大きく分けて「計画の認定」と「支給申請」の2段階で進められます。
まず、取り組み実施前に「キャリアアップ計画書」を作成し、管轄の労働局またはハローワークに提出して認定を受けます。
この際、企業規模の確認や事業所情報などの基本的な書類も必要です。
令和6年度からは電子申請が可能となり「雇用関係助成金ポータル」を通じてオンラインでの申請ができるようになりました。
電子申請には「GビズID」の取得が必要です。
これにより、申請書類作成の負担軽減や手続きの効率化が図れます。
支給申請は、各コースで定められた支給対象期間(多くの場合6ヵ月)経過後、2ヵ月以内におこないましょう。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A
申請書類は、支給要件確認申立書・対象労働者の賃金台帳・出勤簿などを基本として揃えます。
しかし、コースによっては追加書類が必要となる場合があるので注意しましょう。
申請前の準備として最も重要なのは、就業規則の整備です。
賃金規定や正社員転換制度など、助成金に関連する制度については、労働基準監督署への届出や労働者への周知が必要です。
また、賃金台帳や出勤簿等の証拠書類は、支給審査時に原本確認を求められる場合があるため、適切に保管しましょう。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A
支給申請を受けた労働局では、提出書類の確認に加え、必要に応じて事業所の実地調査をおこないます。
不明な点がある場合は、追加資料の提出を求められることも想定しておきましょう。
審査に合格すれば、助成金が企業口座に支給されます。
不正な申請が判明した場合、助成金の返還や罰則が科されるため、正確な申請が求められます。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A
キャリアアップ助成金の申請で、最も注意したい点は支給要件の確認です。
令和6年度は制度改正により要件が変更されているため、最新の情報に基づいた確認が必要になるでしょう。
注意したいのは、事前に提出したキャリアアップ計画と実際の取り組み内容に食い違いがある場合や、必要書類に不備がある場合です。
これらの状況では、助成金が不支給となる可能性が高くなります。
また、同一の取り組みに対して他の助成金などを重複して受給することはできません。
さらに、支給申請は期限内におこなう必要があり、期限を過ぎると申請自体が無効となるので注意しましょう。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A
助成金は、すべての業務に適用されるわけではありません。
例えば、性風俗関連営業や接待をともなう飲食店などの業務は対象外です。
また、暴力団と関係がある事業主や、法令違反がある場合も助成対象にはなりません。
さらに、対象労働者が適切な雇用条件を満たしていない場合(例:キャリアアップ計画に基づいていない処遇改善)は、支給が認められないことがあります。
支給要件の確認が不十分なまま申請をおこない、あとから要件を満たしていないことが判明した場合、不支給となるだけでなく、虚偽の申請として不正受給と判断されるリスクがあります。
不正受給と認定された場合、助成金の返還に加え、事業所名の公表や5年間の助成金受給停止などの厳しいペナルティが課されます。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ助成金の申請では、電子申請を活用することで業務効率を大幅に向上させることができます。
電子申請は、紙の申請に比べて書類の準備や提出にかかる時間を削減できるため、人事部門の負担軽減に役立つでしょう。
書類の作成ミスや提出忘れを防ぐ機能もあり、申請手続きの正確性が向上する点も大きなメリットです。
また、電子申請では「gBizID」の登録が必要です。
これを取得すると、キャリアアップ助成金に限らず、他の行政サービスにもアクセス可能になります。
さらに、申請内容の管理や進捗確認もオンライン上で完結するため、申請の透明性と追跡性が高まるでしょう。
電子申請を進めるには、「gBizID」の取得後に雇用関係助成金ポータルへアクセスし、必要な情報を登録します。
その後、キャリアアップ計画や支給申請をオンラインで提出できます。
【参考】厚生労働省 キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A
電子申請の導入は、人事業務の効率化と省力化を目指す企業にとって、有効な選択肢といえるでしょう。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップと処遇改善を支援する重要な制度です。
令和6年度から電子申請の導入や支給要件の見直しなど、利用しやすい制度へと改善されています。
各コースの特徴をよく理解し、自社の状況に合った活用方法の検討が重要です。
中小企業では、正社員化や賃金増額、社会保険適用など、人材確保と定着に向けた取り組みを支援する制度として有効に機能します。
申請の際は、キャリアアップ計画の事前作成から適切な書類準備、期限内の申請まで、すべての要件を確実に満たすことが重要です。
令和6年度の改正点をしっかり理解し、自社の状況に合った活用方法を検討しましょう。
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