「事業再構築補助金」の特別支援枠として設けられた「コロナ回復加速枠」は、コロナ禍で大きな影響を受けた企業の事業再構築を支援する制度です。
この特別な枠組みは、経営基盤の立て直しと、新たな成長を目指す企業が対象です。
本記事では、コロナ回復加速枠の概要、具体的な対象事業・補助金額、そして申請方法を詳しく解説します。
コロナ禍で事業に大きな打撃を受け、新たな分野への進出や事業転換を通じて経営回復をはかりたい中小企業・事業者の方はぜひ最後までご覧ください。
事業再構築補助金は、中小企業や中堅企業が、経済社会の変化に対応するための事業再構築を支援する制度です。
この制度は、新分野展開や業態転換など、積極的な事業再構築に挑戦する中小企業などを支援し、日本経済の構造転換の促進を目指しています。
企業のメリットは、最大1億円の補助金が受けられ、中小企業で最大2/3、中堅企業で最大1/2の補助率が適用される点です。
特に、コロナ関連債務の借入替えや事業再生に取り組む事業者向けには「コロナ回復加速化枠」が設けられているため、手厚い支援が受けられるでしょう。
【参考】中小企業庁 事業再構築補助金【サプライチェーン強靱化枠を除く】公募要領（第12回）
「コロナ回復加速枠」は、事業再構築補助金の類型の一つとして、コロナ禍からの事業回復を特に加速させることを目的に設立されました。
この枠組みは、さらに通常類型と最低賃金類型の2つの型に分かれており、それぞれの状況に応じた支援が受けられます。
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなかで、多くの企業が売上減少や経営基盤の脆弱化などの深刻なダメージを受けています。
従来の事業モデルでは、回復が困難な状況に陥っている企業も少なくありません。
政府はこの状況に対応し、コロナ禍で影響を受けた企業が新たな事業展開や再構築を通じて成長戦略を描けるよう、この支援枠を設けました。
具体的には、事業の再編や新分野への進出など、経営革新につながる事業の実施を支援します。
対象は、コロナ禍で事業活動に著しい影響を受け、その回復に向けて新たな取り組みを必要とする中小企業や事業者です。
本制度は、企業が補助金を活用して経営資源を効果的に配分し、事業を加速させることで、コロナ禍前を上回る成長の実現を目指します。
また、通常類型では事業再構築の取り組み全般を支援し、最低賃金類型では最低賃金引上げの影響を特に受けた企業を支援します。
【参考】独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業等事業再構築促進補助金（新市場進出）交付規程
「コロナ回復加速枠」は、コロナ禍で大きな影響を受けた企業の再構築を支援するため、補助金を交付しますが、その金額と補助率は、企業の規模や従業員数、そして類型によって異なります。
この補助金を効果的に活用することで、企業の事業再生を力強く支援してくれるでしょう。
具体的な補助金額は、中小企業の場合、従業員数によって上限が設定されており、下限額は一律で100万円です。
中堅企業は、従業員数に関わらず上限が設定されています。
これらの具体的な補助金額と補助率を以下の表にまとめました。
| 企業規模 | 類型 | 従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
| 中小企業 | 通常類型 | 5人以下 | 100〜500万円 | 3分の2 |
| 6～20人 | 100～1,000万円 | 3分の2 | ||
| 21～50人 | 100～2,000万円 | 3分の2 | ||
| 51人以上 | 100～3,000万円 | 3分の2 | ||
| 中堅企業 | 通常類型 | 全従業員数 | 100万円～1億円 | 2分の1 |
| 中小企業 | 最低賃金類型 | 5人以下 | 100～500万円 | 4分の3 |
| 6～20人 | 100～1,000万円 | 4分の3 | ||
| 21人以上 | 100～1,500万円 | 4分の3 | ||
| 中堅企業 | 最低賃金類型 | 全従業員数 | 100～1,500万円 | 3分の2 |
【参考】独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業等事業再構築促進補助金（新市場進出）交付規程
この表からわかるように、中小企業では従業員規模に応じて補助金額が段階的に増加します。
一方、中堅企業は通常類型では補助金額の上限が高いものの補助率は低く、最低賃金類型では補助率が高くなる傾向があります。
自社の規模や事業計画・賃金状況を慎重に検討し、最適な補助金額を選択して効果的に活用しましょう。
なお「コロナ回復加速枠」の対象は、コロナ禍で特に深刻な影響を受けた企業のみです。
コロナ回復加速枠では、コロナ禍で影響を受けた事業者が、経営基盤の強化と将来の成長を見据えた事業再構築に取り組むための幅広い事業が対象です。
ここでは、特に重要な要素であるデジタルトランスフォーメーション（DX）の推進と、新製品・新サービスの開発に関する取り組みを具体例を交えて解説します。
この補助金は、単なる現状復帰ではなく、事業の「再構築」を支援するものですので、既存事業の延長線上ではなく、新たな取り組みであることが重要です。
店舗改装に加え、ECサイト構築や顧客管理システム導入など、デジタル化を組み合わせることで、補助金対象として認められやすくなります。
【参考】独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業等事業再構築促進補助金（新市場進出）交付規程
DXの推進は、業務効率化や新たな顧客の獲得に大きく貢献します。
例えば、以下のような事例があります。
ECサイトの構築・オンライン予約システムの導入・オンライン決済システムの導入などで、販路を拡大し新たな顧客層を獲得できた。
受発注システムのデジタル化・在庫管理システムの導入・クラウドサービスの活用などにより、業務効率を大幅に改善し、コスト削減と生産性向上を実現した。
顧客データを一元管理し、顧客ニーズの把握、マーケティング戦略の最適化、顧客満足度向上に繋げられた。
リモートワーク環境の整備や社員教育の効率化で、情報共有の円滑化が図れるようになった。
DXの推進は、対面接触を減らした業務遂行が実現可能です。
感染リスクの低減と生産性向上を同時に達成できるでしょう。
新製品・新サービス開発の例としては、抗菌・抗ウイルス製品の開発や、非接触型サービスの導入などが考えられます。
市場ニーズに応じた新しい商品やサービスを提供することで、コロナ禍における新たな需要の獲得や事業の多角化が図れるでしょう。
コロナ回復加速枠の申請にあたっては、いくつかの要件を満たす必要があり、審査では特定のポイントが重視されます。
ここでは、申請に必要な要件と審査で重視されるポイント、特に事業計画書の重要性や具体的な目標設定のコツを詳しく解説します。
【申請者の資格要件】
申請は事業者自身がおこなう必要があり、認定経営革新等支援機関を含む外部機関の者を担当者として申請できません。
申請者自身または申請者が雇用する従業員以外の登録があった場合は、虚偽の申請として交付決定が取り消されます。
【審査のポイント】
【重要な注意事項】
【参考】独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業等事業再構築促進補助金（新市場進出）交付規程
これらの要件とポイントを十分に理解し、綿密な準備をおこなうことで、コロナ回復加速枠の補助金獲得の可能性を高めることができるでしょう。
「コロナ回復加速枠」の補助金を申請するためのプロセスは、いくつかの段階に分かれており、各段階で必要書類の提出が必要です。
ここでは、申請の流れと、提出が求められる書類を詳しく解説します。
申請は電子申請システムを通じておこなわれます。
申請を検討している企業は、GビズIDプライムアカウントを取得し、申請システムへの登録を済ませておいてください。
【申請手続きの主な流れ】
まず、申請要件を満たしているかどうかを確認し、事業計画を策定しましょう。
その後、必要な書類を準備し、電子申請システムを通じて申請をおこないます。
申請後、事務局による書類審査がおこなわれ、その結果、採択された企業には交付決定通知書が送付されます。
申請から交付決定までには、一定の期間を要するため、スケジュールを確認し、余裕を持って申請をおこないましょう。
特に、コロナ回復加速枠では、審査が集中する可能性もあるため、早めの準備と提出を心がけることが重要です。
以下に、提出が求められる書類を基本書類と追加書類に分けてまとめました。
すべての申請に必要な書類は表のとおりです。
| 書類名 | 内容 |
| 補助金交付申請書 | 企業情報や事業計画の概要を記載する書類 |
| 事業計画書 | 事業再構築の具体的な内容や目標、実施スケジュールなどを詳細に記載する書類 |
| 経費明細書 | 補助対象経費の内訳を詳細に記載する書類 |
| 企業概要書 | 企業の設立年月日・事業内容・資本金・従業員数などを記載する書類 |
| 直近の決算報告書 | 直近の年度の決算状況を証明する書類 |
| 売上減少証明書類 | コロナ禍で売上が減少したことを証明する書類 |
| その他事務局が指定する書類 | 必要に応じて事務局から提出が求められる書類 |
【参考】独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業等事業再構築促進補助金（新市場進出）交付規程
これらの基本書類は、すべての申請者が提出する必須の書類です。
提出漏れや記載ミスがないよう、丁寧に準備を進めてください。
コロナ回復加速枠に特有の書類を紹介します。
【参考】独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業等事業再構築促進補助金（新市場進出）交付規程
これらの追加書類を求められた場合は、速やかに対応しましょう。
特に、賃金引上げ計画書は、補助金の活用が従業員の待遇改善につながることを明確にするために重要な書類です。
必要に応じて、事業計画を修正したり、新たな課題に対応したりしながら、柔軟に経営を立て直していきましょう。
補助金の活用目的を明確にし、コロナ禍での影響分析と課題特定をおこないましょう。
「売上回復」「新規顧客獲得」「業務効率改善」など、具体的な目標設定が重要です。
事業計画には実現可能性と成長性が必要です。
市場ニーズに応える新製品・サービスの開発と、既存資源の効率的活用を検討し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
補助金は単なる資金投入ではなく、効果を最大化する戦略が重要です。
設備やシステムの導入後は、研修実施や営業戦略の見直しなども含めて検討しましょう。
最後に、補助金活用後は効果を定期的に測定し、必要に応じて計画を修正しながら、柔軟な経営改善を進めていきましょう。
事業再構築補助金のコロナ回復加速枠は、コロナ関連債務の借換や事業再生に取り組む事業者を支援する制度です。
従業員規模に応じて、通常類型では最大3,000万円の補助金が支給され、補助率が中小企業で最大3/4、中堅企業で最大2/3と手厚い支援が受けられます。
本制度は、コロナ禍からの事業再建と新たな成長への投資を同時に実現できる点が最大のメリットです。
また、既往債務の借換えをおこないながら新事業に挑戦する企業を手厚く支援する制度設計のため、財務体質の改善と事業転換の両立が可能です。
本制度を活用して、経営基盤の立て直しと持続的な成長を実現しましょう。
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